(2) 解答の進行の幾何学的表示
@〜Dの初段階を逐次見ていくと、問題解決者の注意が彼の探求する幾何図形に
どのように及ぶか、彼がどのようにしてこの図形の計画の本質をなす連結の体系
を一歩一歩作り上げていくかがわかる。その展開を検討すれば、その中に幾つかの
相と活動を見出すことができる。
@からDでは、下向きに、未知数からデータの方へ進んでいる。
先ず、@からAの段階で問題のアウトラインをつかもうと、第一の
(大きな)トップダウンが起こっている。間にあるものは、空白であるが、
問題を理解・把握しようとしている。
B、C、Dでは、掴んだ問題の概要をさらに細かく、(上から下へ)分化させて
切り崩そうとしている。第二の(小さな)(ミドル)トップダウンとでも呼ぶのだろうか。
踏み石となる補助問題を探して、試行錯誤しているのがわかる。
つまりBからDは論理的連結の体系を模索しながら、解答の計画を組み立てている。
Cの段階で、踏み石となる条件式をみつけることができた。
そこで、なんとか計算してみようとC’を試みようとする。
しかし、本当にこのままで解答にたどり着くのか、いやたどり着くとしても、
もっとうまくできないだろうか。
試しにC’のようにデータから△APCと△ABCを求めようとしてみる。このとき、
最下層のA,B,Cからボトムアップ(演繹)の動きがみられる。
この演繹をしながら、モニタリング(気づき・感覚・予想・点検・評価)、
コントロール(目標設定・計画・修正)といったメタ認知的活動を試みている。
その結果、もう少しうまい方法があるのではないかと、この方法を中断する。
C’の方法に挫折したあと、点Pを含む線分ABが底辺、頂点Cの三角形に気づく。
点Pを含む三角形APCは、三角形ABCとほとんどのものを共有している。
△APCの底辺APは△ABCの底辺ABの一部であるし、斜辺ACは完全に共有している。
面積を決定づけるもう一つの要素は何であろうか。高さである。
そこで高さを見つけようと、線分ABに頂点Cから垂線hを下ろしてみる。
この補助線が、アイデアを決定づけることになる。
Eになって、最後に計算(演繹)することになるが、使われる計算はわずかになる。
点Pを求めるためのデータは、点A,Bのみ。
直線を求めるために、点Cと点Pを用いるだけである。図にしてみると、
余計な線が随分減ったのがわかるだろう。