第三章 スキーマ形成とストラテジーの転移
第1節 幾何学的表示によるスキーマ形成の考察
3-1-1 三角形の面積を2等分せよ〜その1〜
(1)@次の問題を考えてみる[未知のものは何か]
まず、何を求めるのか[未知のものは何か]。ここでは、Cを通り、ABと交わる直線の方程式である。
ここではその直線をとよぶ。直線
と線分ABの交点をP(X,Y)と置くことにする。
この直線の式が求めたい未知数(未知のもの)である。
私たち(problem solver)の精神状位は、左図のように直線
と記した一個の点によって表される。
私たちの注意全体はこの一点に集中されなければならない。
A しかし、何も与えられていないなら未知のもの(直線
)の式は求めることができない。
「データは何か?」あるいは「手もとにあるものは何か?」
と、自問するだろう。
そして我々の注意は三角形の3つの頂点A(−4,2),B(4,8),C(6,1)を強調する。
すると、こんどは、図のなかに、A,B,Cと記された3つの新しい点が現れる。
これらはデータを表示し、未知数(直線)とは間隙、開いた空間で隔てられている。
この開いた空間は未解決の問題を象徴する。我々の問題は、未知のもの(直線)と
データA,B,Cとの連結を目標としている、この間隙に橋をかけねばならない。
B 直線はどのような形で表せるか。またその際には、何が必要になるだろうか。
直線が点Cを通ることは分かっている。直線は、もう一方の点があって初めて一つに定まる。
したがって、直線と線分ABとの交点をP(X,Y)とおくことにする。
つまり、次の図のようにP(X,Y)という点が精神状位の中に現れてくる。
ここまでくると、直線
の式は仮に立てることができる。
P(X,Y)とC(6,1)を通るから、
・・・(※)
となる。
C こうすると、問題は、△APCと△BPCの面積の比較となる。
やっと条件が揃ったようである。
ポリア流のダイアグラムでは、この条件はどこに入る
のだろうか。仮に図のように入れておくことにする。
また、文字が絡む場面を減らす意図で、
2△APC=△ABC
としたほうがいいかもしれない。
これで問題を△APCと△ABCの面積をそれぞれ求めるという部分に分けることができる。
この上で、両者の関係をつなげばよい。
△ABC、△APCの面積は、座標平面上の三角形の面積の公式
などを用いれば、なんとか求められそうだ。(中学生には範囲外かもしれないが)
おそらくXとYの式になるだろうから、(※)の式と連立させることになるだろう。
D ところで、もう少し、簡単に出せないだろうか。
このままでも確かに解けるけれども、この問題に特化した解き方があるかもしれない。
条件をもっと絞り込めないだろうか?
「飛び石となる補助図形をさがせ」
ここで図のように点Cから線分ABに垂線hを引いてみる。
もう少し見やすいように逆さまにしてみると・・・。
左の図のようになり、△ABCと△APCは高さを共有しているのがわかる。
すると、△APCと△ABCの面積比は、底辺比に帰着される。
△APC:△ABC=AP:AB
「条件の一部を残し他を捨てよ」
2次元の面積比を1次元の線分比
に落とすことができた。
面積比(条件)の一部(高さ)
を固定し底辺比になおしたことになる。
このことは、3次、4次、5次・・・n次というように、問題の次元を上げていっても、
同様に条件を固定することで次元を落とし、解けるかもしれないという示唆を私たちに与えている。
「視覚化せよ」
この底辺比に帰着させることは、実際に図に書いて初めて分かる情報である。
つまり、視覚化せずに純粋に代数のように解くことはとても難しいことであることがわかる。
このあとは、条件 2△APC=△ABC より
△APC:△ABC=AP:AB から導かれる底辺比は、
2AP=AB となる。
E したがって、点Pは点A,Bの中点であるから、
(※)式の(X,Y)に(0,5)を代入して
とすれば求めることができる。